各種水質系

濁度計の解説

濁度計選びの基準って何?!

  • 濁度計はどこのメーカーも皆同じなのか?
  • 河川ごとに違う濁りの種類でもちゃんと測れる?
  • 方式の違う機器でも価格は同じなのか?
  • 厳密に査定しリスクの少ない機器を選ぶには…?

簡易方式から高精度な複合方式まで!

濁度計には大きく分けて4つの方式が在ります

透過光測定方式

片側から光を当て、その透過光を測定し、光の減衰の度合が、水中の懸濁物質の濃度に関連することを利用して濁度を知るもっとも簡易な方式。ホルマジン等基準液では懸濁物質の粒径がほぼ一定で、色も乳白色なため数値は正しく出るが、フィールドの濁度測定では、川や湖沼によって懸濁物質のサイズも水色もまちまちなため測定値に影響が出ます。そのため今では、自動測定には、一部漏水用濁度計を除き、全国展開をしているメジャーなメーカでは一切採用していません。

散乱光測定方式

照射された光は懸濁物質の表面で反射するものと吸収されるものに別れます。その光の量は、照射光の波長と粒度分布で大きく変化します。一定濃度までは比例して増加して、それを超えると粒子による吸収や干渉が起こり変化量は減少します。この、散乱光のみを測定し、その散乱の強さが水中の懸濁物質の濃度に比例することを利用して濁度値を知る方式です。ただ、暗幕に光が反射しないように、懸濁物質の色によって測定値が変動してしまう傾向を持っています。

透過光・散乱光演算方式

透過光と散乱光のどちらかだけでは、上記の様に懸濁物質の色や粒度分布、さらにはその密度によって、光の性質上避けられない問題が残ります。
ところが、散乱光は濁度の増加に従って一定の増加傾向を示し、透過光は減少する。この、散乱光と透過光を測定し、その両者の比率と懸濁物質濃度の比例関係を利用し、より正確な測定を可能とした方式。この比を取ることにより散乱光、透過光単独では問題となる測定水の色、粒径・粒度の影響が極めて減少します。この散乱光/透過光の性質を演算し濁度値に反映させた方式が、透過光散乱光演算方式です。

積分球測定方式

積分球内にもうけてある受光素子で散乱光と全入射光をそれぞれ測定し、この両者の比が液中の懸濁物質の濃度に比例することを利用して濁度を測定する、透過散乱光演算方式の一種。従って、設置当初では極めて正確な測定が出来ます。しかし、時間とともに鏡状の積分球内面が劣化し反射量が減衰する傾向が在り、年に1回ぐらい積分球の調整や取り替えが必要。このため調整費用が嵩む難点があります。ライトスパンを長くしづらく、結果的に通水性に劣るため、フィールドでは精度を保つのが難しい面も。そのため、一般的には試験室やタンク内での測定に適しているといわれます。

認識したい濁度計の真実

現実河川に合わせた濁度計の選定を!

火山灰や黒ぼく水の濁度測定は方式の違いが最重要!

懸濁物質の粒子数が多く・粒径が細かい濁りなどでは、魚類の鰓につまって死滅させる恐れさえあるといわれます。それだけに、ダムの水質管理にはどの事業体も神経を配っています。特に、火山灰のように粒子が細かい濁りや、黒ぼく(クロボク)と呼ばれる真っ黒な濁りが出る河川やダム湖沼では、正確な濁度の測定が難しく、その濁度値には細心の注意を払う必要があります。

公定法であるJIS規格はあくまで基準値と知るべし・・・。

現在の公定法であるJIS規格によるカオリンやホルマジンという乳白色で粒径がほぼ一定な濁度物質による測定基準では、濃度毎の濁度値は各社各方式の機器でも測定値がほぼ一致します。このように、何か基準がないと(4種類の測定方式のどれかを採用している)各メーカの基準値が定められないため、やむなく一定の基準を得るために、公定法のJIS規格による濁度の基準が設定されているのが現実なのです。
現実河川に置き換えた場合、白色に近い濁りで、比較的濁りが出ずらい澄川の場合は、方式による差はあまり気にしなくても良いでしょう。簡易な方式の製造原価の安いメーカを選んでも問題は出ないと思われます。 ところが、殆どの現実河川の濁度計測では、濁度を構成する懸濁物質の色や粒径の大小、さらにはその密度によって、方式の差で測定値が一致しない現象が起きます。
火山灰のような懸濁物質の粒径が細かい懸濁物質主体粒度分布と、腐葉土ような大粒径主体の粒度分布では「透過光方式」では濁度の濃度が同じでもその濁度数値には大きな差が出てきます。
さらに、黒色の強い濁りは、暗幕が光を反射せず吸収してしまうように、「散乱光方式」の機器では光が反射しづらく、濁度値が低く出る傾向が在ります。

方式の異なるメーカの機器では測定値が一致しない「実際河川測定」。

このように、河川毎、及び流量変化による粒度分布や水色の変化は、濁度計を選ぶ際の大きな要素となります。実際の河川で測定すると、水色/懸濁物質の色や粒度分布が違い、「メーカが違えば測定値が一致しない」理由を生み出します。 それは、正確にいえば測定方式の違いによるもので、同じ方式ならメーカが違っても測定値はほぼ一致し相関性が得られます。簡易な方式と高度な方式では各河川ごとに違う懸濁物質の粒度分布と各メーカごとに異なる測定方式によって測定値に大差が生じるのは当然なのです。公定法で定めた濁度基準では合致していた数値が、実際のフィールドでは数値の一致はもとより、相関性すら得られない現象が生じるのはこのためです。
よく「メーカごとの相関性がとれない・・・」という言葉で語られる濁度数値の不一致は、簡易な方式から高度な方式までを一色単に扱っているため、現実河川に対応できない簡易な方式の機器と高度な方式で精度の高い機器との差に起因するといっても過言ではないでしょう。
早い話が、精度の違いが公定法のJIS規格によるカオリン/ホルマジン濁度の基準によってカモフラージュされ、各方式の精度を同一と錯覚しているケースが大半です。つまり、「測定値が一致しない」のではなく、「実際河川では精度の違いが数値差となって出る」のが実態なのです。

国展開するメーカで自動観測に透過光方式の採用は皆無・・・。

透過光方式のような濁りの色や粒径に左右される簡易な方式の機器では、時と共に変化する懸濁物質の粒子数・粒径、そして濁りの色に対応できず、高度な方式の機器とは測定誤差が大きくなってしまいます。
全国展開をしている自動観測装置のメーカで、漏水濁度以外の一般フィールド用に、もっとも簡易な方式の「透過光方式」を採用しているところが無いのはこのためです。導入する際には、こうした点を踏まえ、高度な方式の機器と単純な方式の機器の違いを踏まえることが重要となります。そういう視点で見れば、同じ「濁度計/水質計」であるというだけで、方式の違うメーカの機器が単に入札によって同レベルでしかも、同価格で納入されていることの不可思議さにも気付かれることでしょう。

河川利用者が目を光らせる今後は機器選定の重要度が増大。

この紙面では、濁度だけを取り上げましたがDO/pH/クロロフィル/電気伝導度/水温/UV/塩分等のセンサーでも似たようなことが在ります。最近は、下流域に住みその河川を利用する側が、あらゆる環境に目を光らせる時代となってきました。したがって、水質観測でも、機器の選定はますます重要度を増していくことでしょう。